またつぎを楽しみにしていますね

 
『この苦しみがいつまで続くのかと思うととても辛い。
 私は自分の弱さに震えています。どうか助けてください』
 
 
 
今日、Y子さんは私に、そう伝えてくれた。
 
声を出して伝えてくれたわけではない。
 
意思伝達装置というパソコンを使って
その言葉を私に伝えてくれた。
 
Y子さんは既に言葉の機能を失っている。
 
Y子さんが60代の半ばで、
ALSという病気を発症されて、
まだ2年ほどしか経っていない。
 
しかし、すでにA子さんは自分の意志で、
身体を動かすことはできない。
 
顔をほんの僅かに左右に動かすこと。
 
利き腕ではない左手の指先を
ほんの少し動かすこと。
 
それと顔の表情を少し動かすこと以外は、
自分ではなにもすることができない。
 
 
私が『緩和ケアグループホームリビング・シャンティめぐみ
という終末期患者さんたちが共同で生活をする施設に、
週に1回、ボランティアで通うようになったのは、
今年3月頃からだった。
 
当初から私は、Y子さんの担当として、
お話をさせてもらったり、
ワープロで手紙を代筆させてもらったりしていた。
 
当時はまだ、ある程度手を動かすことができたので、
筆談でお話を聞かせてもらうことができていた。
 
しかし、ひと月ほど前からそれも難しくなり、
今は意思伝達装置を使って会話をさせてもらっている。
 
これまで、私が面会に伺ったときに、
幾度となく、
 
『あなたと出会えたことに感謝しています』
 
『神が導いてくれたと思っています』
 
そう言ってくれていた。
 
Y子さんは敬虔なクリスチャンで、
若くしてシスターになられ、
カトリック系の小学校の校長先生として、
沢山の生徒から慕われてきた人だった。
  
にもかかわらず、
私が心の話しをするときのベースになっている
『輪廻転生』や『前世からの繋がり』
などという話を真実だと受け入れてくれていた。
 
 
そのY子さんから今日、
意思伝達装置を使って伝えられた言葉が、
 
『この苦しみがいつまで続くのかと思うととても辛い。
 私は自分の弱さに震えています。どうか助けてください』
 
だった・・・。
 
 
実は、そのメッセージの前に、
こんなメッセージも伝えてくれていた。
 
『神はあなたに私をゆだねたのです』
 
 
私は逃げられないと腹をくくった。
 
上っ面の慰めや同情、共感だけではダメだと思った。
 
たとえ厳しい話になっても、
自分が真実だ信じていることを伝えようと思った。
 
そしてY子さんにこう話をさせてもらった。
 
 
Y子さんはその病気に苦しんでいるのではなく、
その病気が苦しいと判断しているから苦しい。
 
苦しみがいつまで続か・・・、と思われているのは、
意識が今ここには無く未来に行ってしまっているから。
 
でも、Y子さんが生きているのは、
今ここ、この瞬間だけだということ。
 
すべての人は、もちろん私ですら、
明日、命があるという保証はどこにもない。
 
 
そこまで話した後、私はこう質問をした。
 
『最近、Y子さんは朝目覚めて、
 命あることを神様に感謝したことがありますか?』
 
『今ここで流れてきているY子さんの大好きな音楽が
 聴けていることに感謝されたことありますか?』
 
『かつてはすることができなかった、
 一日中、大好きな神様のことだけを考えるということ。
 それができることに感謝したことがありますか?』
 
Y子さんは、ほんのかすかに、
首を左右に振って私の目を見つめていた。 
 
私は話を続けた。
 
 
今を生きるということは、
いま目の前のことを楽しむということ。
 
それに最も大切なことは、
苦しんでいるのは本当の私ではなく、
この身体を私だと思っている自我だということ。
 
自我が思考を使って苦しい感情を発生させていて、
本当の私はそれを楽しんでいるのだということ。
 
本当の私は魂の存在であり、
魂の存在のままでは感情を味わうことができないこと。
 
だから肉体とその肉体だけに宿る自我を使って、
味わえなかった様々な感情を楽しんでいるということ。
 
 
その証拠に、苦しんでいる自分を観察することができるし、
観察者である私は、その苦しみを感じていない。
 
苦しみを感じているのは自我というちっぽけな存在であり、
自我が私のすべてではないから観察することができる。
 
感情はどうしても出てきてしまうもの。
 
でも、その感情を感じているのは、
自分のすべてではないとハッキリ認識すること。
 
そして、つらい感情が出てくるからと言って、
自分は弱い人間などと自分を責める必要はない。
 
出てくる感情を抑え込むと逆に心が耐えきれなくなり、
もっとつらい感情となって爆発してしまう。
 
出てくるものは仕方がないと自分を許して、
つらい感情を感じてしまっている自分を
思考を働かせずに、ただただ観察する。
 
そうすればその感情は数分で燃えてなくなる。
 
 
などなど、真剣に、しかし穏やかに、
決して押しつけにならないように、
細心の注意を払いながら言葉を選び話をさせてもらった。
 
 
私の話しが終わったとき、
Y子さんの目から涙があふれていた。
 
なんどもなんども小さく、微かにうなづいてくれた。
 
そして再び意思伝達装置を使って、こう綴ってくれた。
 
『いままで私が教えられてきた宗教は形だけ、
 あなたは本物です』
 
私は思わずY子さんの手を握りしめていた。
 
本物と言われたことが嬉しかったのではない。
 
私の思いが伝わったことが嬉しかった。
 
私が伝えたいことを理解してくれたことが嬉しかった。
 
 
  
面会時間はかなりオーバーしていた。
 
最後にY子さんは、
微かな頬笑みと一緒にこう綴ってくれた。
 
『またつぎを楽しみにしていますね』
 
と。
 
 
 

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