人に会うこと

青年は、ある身障者施設で働くようになった。
そこで重度の障害をもった男性が、
病気で寝たきりになられている姿を見た。
 
流動食を食べる以外に何もできない状態。
 
人と会話をすることもなく、
話しかけられても応えられないばかりか、
表情すら変えることができない。
 
ドロドロの流動食を朝昼晩とただ食べる為だけに
生きていると思われたその人を見て、
青年は疑問を感じて先輩職員にこう聞いた。
 
「この人の生きる意味ってなんなんですか?」
 
するとその先輩職員の答えは一言だった。
 
「人に会うこと」
 
青年は、その時、その答えの意味がわからなかった。
 
 
それから何日か経った。
 
あるひとりの男性が施設を訪れてきた。
 
男性は施設のすぐ近くにある比叡山に登り、
たった今、下山してきたと言う。
 
山に登った目的は自ら命を絶つことだった。
 
早朝から山の中をさまよいながら、
最期の場所を見つけようとしていたが、
 
「死ぬ前に一度だけ人様の為に
 何か良いことをしてから死にたい」
 
男性は、そう思ったという。
 
そこで、男性はすぐに下山し、
その希望を叶えられるところは無いかと探し回り、
辿り着いたところが青年の働く施設だった。
 
施設の職員は、男性の希望とその理由を聞き、
何も言わずに男性の希望を受け入れた。
 
そして、寝たきりとなっているあの人の部屋に連れて行き、
世話をしてもらうことにした。
 
男性は一日中、付きっきりでその人の世話をした。
 
食事の準備、排せつ物の処理、身体の手入れ、
ただ黙ってお世話をし続けた。
 
そして夜になった。
職員がその男性に仕事の終わりを告げた。
 
すると男性は突然に涙を流しながらこう話した。
 
「僕は間違ってました。
 僕は死にたいと思ったことがとても恥ずかしい。
 このような姿になっても生きようとするこの人を見ていて、
 僕がどれだけ恵まれているかを知りました。」
 
と。
 
この言葉を先輩職員とともに聞いていた青年が、
「人に会うこと」この言葉の意味が、
わかった瞬間だった。
 
 
 
人は、ただ生きているだけで百点満点なんだと思う。
それ以上のことができたら、
百点の上に点数をただ積み上げていくだけのこと。
 
際限の無い加算点を追い求めるよりも、
百点満点で充分だってことがわかると、
どんな人生だって素晴らしいんだと
きっと思えてくるはずだ。
 
 
 
以下、水内喜久雄 編 PHP
 
『一遍の詩があなたを強く抱きしめる時がある』より
 
 
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 人は何か一つくらい誇れるものを持っている
 何でもいい、それを見つけなさい
 勉強が駄目だったら、運動がある
 両方駄目だったら、君には優しさがある
 
 夢を持て、目的を持て、やれば出来る
 
 こんな言葉に騙されるな、何もなくていいんだ
 人は生まれて、生きて、死ぬ
 これだけでたいしたもんなんだ